
ベトナムの結婚式に参加して考えた。経営における第二領域の重要性
株式会社カネタの松野若斗です。先日、ベトナム人の社員の結婚式のためにベトナムへ行きました。そこで感じたことなどを書かせていただきます。
1. ベトナムの結婚式での異文化体験 ― 道路を封鎖しての結婚式

道路上に造った結婚式会場
結婚した社員は、来日6年目のチョンさんというベトナム人です。カネタに入社したのは今年の1月です。奥さんとはすでに入籍しているのですが、ベトナムに里帰りして、結婚式を挙げると聞き、ベトナムでの結婚式に参加させていただきました。
チョンさんの故郷の村は、ハノイから車で1時間半の所にあるハイズオンという町から更に車で30分移動した場所にあります。空港まではチョンさんの弟さんがわざわざ迎えに来てくれ、車でその村にあるチョンさんの実家に伺いました。実家でご両親にご挨拶すると、チョンさんのお父さんが「翌朝の7時に来てください」とのこと。言われるままに翌朝7時にチョンさんの実家に伺いました。
チョンさんの実家の前には30メートルの長さの広いテントが張られており、そのテント内が結婚式の会場です。チョンさんの実家の敷地の広さに驚いたのですが、よくよく話を聞くと、そこは家の敷地ではなく、道路だとのこと。なんと、道路を封鎖して、結婚式会場のテントを張っていたのでした。
結婚式のスタートは朝の8時です。6名がけのテーブルが50個並べられていて、お客様は約300人。日本であれば、結婚式の式場や来客など結婚する当事者が決めますが、ベトナム式では、チョンさんのご両親がすべて采配しています。
例えば、料理に使う鶏は7か月前から飼って、ヒナから育てた鶏でした。披露宴で出されるお料理は、家族と近所の人による手作りです。お酒もご両親が1年前から寝かせておいたものと聞きました。
結婚式会場のテントは道路上に張っているので、テントに面した喫茶店は2日間、営業できません。こうしたことができるのも日頃のご両親の近所づきあいの賜物なのでしょう。ご両親や近所の方々の親しい間柄もあって、結婚式はとてもアットホームな雰囲気でした。
カネタはこれまでベトナム人実習生を受け入れてきましたが、ベトナムでの結婚式に参加するのは初めてでした。改めて、日本との文化や習慣の違いに驚かされました。結婚式は朝の8時に始まって、終了は13時頃。5時間にも及ぶ結婚式でした。

新郎新婦とそのご家族です
今回、結婚式に参列して、チョンさんがご両親に大切に育てられ、愛されていることが伝わってきました。チョンさんの末永い幸せを祈っています。
2. 元社員との再開 - 日本語を武器に派遣業の会社を設立
さて、今回、ベトナムには会長と二人で行きました。参加した結婚式の様子を会長がFacebookでシェアしたところ、思わぬメッセージが届きました。10数年前にカネタで一時、働いていたベトナム人、チェンさんからのメッセージです。
そこには「今、ベトナムですか?会いたいです」と書かれていました。結婚式の翌日、ハノイで10数年ぶりにチェンさんと再会しました。

チェンの会社の受付で記念撮影を撮りました。
真ん中がチェンさんです。
私の中のチェンさんのイメージは、モノづくりに携わる青年でした。10数年ぶりに再会したチェンさんは別人のように立派な経営者となられていて、その貫禄に驚きました。
チェンさんから聞いた話によると、チェンさんは、一度は自転車の部品販売で起業するも、うまくいかずに撤退。物品販売業は置き場所が必要なこともネックだったそうです。その後、日本語が話せるという特技を武器に、日本への実習生の送り出し機関の会社を立ち上げ、経営されているとのことでした。
案内された本社事務所は賃貸ではあるそうですが、8階建てのビルで、社員は20人。生徒は250人が在籍しているという話でした。250人の生徒には募集後、半年間勉強してもらって、日本に送り出しします。送り出した後は、また次の生徒の募集です。
チェンさんに最新のベトナム事情をいろいろと教えてもらいました。例えば以下などです。
・ベトナムの年収は、日本の年収の1/3くらいでベトナム人の感覚では、今も日本の時給はいい。
・ただし、日本で働きたいベトナム人は、かつての7割くらいに減っている。
・理由の一つは、日本で残業規制が厳しくなっていることがある。ベトナム人は残業代を稼ぎたいから、残業がある方を希望する。
・ベトナムから日本への派遣が今後ずっと続くわけではないと思うので、今後を見据えて、日本以外の国への派遣も視野に入れている。
チェンさんが派遣業で成功するには、相当、努力もされているはずですが、努力している顔は見せていない。失敗したことも隠さずに、失敗を学びに変えて、次に進んでいる。自分も見習いたいと思いました。
3. 経営における第二領域の重要性
今回のベトナム行きでは、ベトナムでの結婚式を初体験した他、10数年ぶりに元社員と意外な再会を果たすなど驚いたり、考えたりすることが多かったです。
その中で、特に印象に残ったことの一つは、経営者となったチェンさんが現時点で十分に成功していながら、先のことを見据えて、次の打ち手を考えている点でした。
仕事などで、重要だけれど緊急でない領域のことを第二領域と言います。例えば、経営戦略を立てる、新規得意先を開拓する、新製品を開発する、技術力アップする、人材育成するなどは、今日しなくても明日すぐに困るわけではないが、何もしないと未来に困ることになる。言わば、より良い未来を作るための取り組みです。
今回、再会したチェンさんは、人材派遣で成功しつつ、今後の事業環境の変化を予測して、次に何をするかを考えて経営をされていました。
自分で起業して成功した経営者はやはり立派だと思いました。自分も第二領域を大事にしたいと考えさせられた、今回のベトナム行きでした。