書籍「図解よくわかる金属加工 – 原材料から金属製品ができるまで」のご紹介
カネタは主に製缶業を行っている会社です。製缶業では、レーザーでの切断や曲げ加工、溶接、機械加工などによって製品を製作しています。また、カネタは、切粉圧縮機という自社製品を製造・販売しています。切粉圧縮機は切削加工で出た切粉を圧縮する機械です。
製缶業や切粉圧縮機製造の過程を考えたたけでも、金属加工には、レーザー加工、曲げ加工、溶接、切削加工などさまざまな種類があることがわかります。
「図解よくわかる金属加工 – 原材料から金属製品ができるまで」(吉村泰治)は、さまざまな金属加工について、体系的に解説した書籍です。こうした本を読むと、日頃、行っている溶接などが金属加工の中でどういう位置づけであるかがわかり知識が整理されます。
ここでは、同書の目次や内容の一部を抜粋して、ご紹介します。
「図解よくわかる金属加工 – 原材料から金属製品ができるまで」目次
「図解よくわかる金属加工 – 原材料から金属製品ができるまで」の目次は以下の通りです。
第1章 金属材料とその加工
第2章 原材料から元材をつくる
第3章 元材に形状を付与し金属製品に仕上げる
第4章 元材に機能を付与し金属製品に仕上げる
第5章 金属加工を実現させる金型
第6章 金属加工を実現させる設備
第7章 金属加工を下支えする測定・評価技術
第8章 金属加工のこれから
鉱物から金属材料が作られ、その金属材料を製品に加工するまでの全体の流れと、それぞれの加工法の具体的な内容が解説されており、日頃の個々の業務の全体像がイメージできる構成になっています。
「図解よくわかる金属加工 – 原材料から金属製品ができるまで」内容の一部紹介
次に、本書の一部を抜粋して紹介します。本書では、金属加工を大きく3つに分類しています。具体的には下表の通りです。
金属加工の種類
NO 加工の種類 具体的な加工法
1 金属を個体から液体、液体から個体に変化させる金属加工 溶解・鋳造、アトマイズ、溶接など
2 個体の金属を室温や高温で塑性変形させる金属加工 圧延、伸線・引き抜き、鍛造、絞り・張出し、曲げなど
3 個体の金属を塑性変形し続けて破壊する金属加工 せん断、切削、研削など
カネタが日々行っている溶接は、金属を熱して変化させる加工、切粉圧縮機が対象にしている切削加工は、金属を部分的に除去する加工という違いがあることがわかります。
また、切削加工や研削加工は、「機械加工」という括りの中に位置づけられています。
機械加工の種類
この機械加工については「工作機械を用いて、金属材料を切削または研削する加工」と説明しています。
加工の分類 加工の説明 加工の分類 加工の説明 加工の種類 工作機械の種類
機械加工 工作機械を用いて、金属材料を切削または研削する加工 切削加工 金属材料の不要部を切り屑として除去して、必要な形状・寸法へ仕上げる加工 穴あけ加工 ボール盤
旋盤加工 旋盤
フライス加工 フライス盤
研削加工 研削砥石や研削ホイールで不要部を削り取る加工 機械研削 研削盤
上記の説明を読むと、機械加工の種類の一つに切削加工があること、切削加工が金属材料の不要部を切り屑として除去する加工であることがわかります。
(カネタの切粉圧縮機は、切削加工で出る切り屑=切粉を処理しやすいように圧縮する機械です)
工作機械の種類
また、本書では、工作機械について、日本産業規格の定義を紹介しています。日本産業規格の定義によると、工作機械とは「主として金属の工作物を、切削、研削などによって、または電気、その他のエネルギーを利用して不要な部分を取り除き、所要の形状に作り上げる機械」とのことです。
具体的には、ボール盤、旋盤、フライス盤、放電加工機が挙げられています。
「図解よくわかる金属加工 – 原材料から金属製品ができるまで」目次詳細
「図解よくわかる金属加工 – 原材料から金属製品ができるまで」の各章の内容は以下の通りです。
第1章 金属材料とその加工
第1章では、金属材料の種類や特徴などが説明されています。鉱物という原材料から元材が作られ、一次加工して板や棒などの素材となり、二次加工して金属製品が作られるという大まかな流れが説明されています。
NO 項目 内容
1 人類の金属加工との出会い 金属加工は自由鍛造から始まり、溶解・鋳造、熱間鍛造、製錬、接合へと進化
2 金属材料の種類と特徴 さまざまな種類と特徴を持つ金属材料
3 鉄鋼材料 私たちの身の周りでさまざまな用途に使用されている金属材料
4 非鉄金属材料 鉄を主成分とする鉄鋼材料以外の金属およびその合金
5 銅と銅合金 人類が初めて手にした歴史ある非鉄金属材料
6 アルミニウムとアルミニウム合金 さまざまな優れた特性を有する代表的な非鉄金属材料の1つ
7 金属加工の目的と分類 金属材料にエネルギーを与えて形状や機能を付与して金属製品へと仕上げる
8 金属加工に重要な材料特性 金属材料の特性を考慮した金属加工プロセス選定
第2章 原材料から元材をつくる
第2章は、原材料から元材をつくる工程について説明しています。具体的には溶解、鋳造、圧延などが説明されています。
NO 項目 内容
9 原材料から1次加工元材へ 鉱石を採鉱・選鉱・製錬し、鋳型に流し込み、1次加工元材へと形作る
10 1次加工で形作られる形状 塊状と粉状、さらには板・条・型材・管・棒・線・箔
11 溶解 固体の金属を加熱して液体の金属に状態が変化
12 鋳造 液体金属を鋳型に注湯し、冷却して目的の形状に凝固
13 バッチ式鋳造 一定量の溶湯を1回ずつ鋳型に注ぎ、注湯毎に独立した鋳塊を得る鋳造方法
14 連続式鋳造 鋳塊を連続的に得る鋳造方法
15 ダイカスト 溶湯を精密金型に高速・高圧充填させて高精度鋳物を大量に生産
16 アトマイズ法 金属粉末の代表的な製造方法
17 粉末冶金 金属粉末を元材とする金属加工プロセス
18 圧延 回転する2本のロールで長尺な素材を得る
19 押出 さまざまな断面形状の長尺な素材を得る
20 連続押出 元材を連続的に金型内に供給して無限長の押出材を得る
21 伸線・引抜き 穴ダイスから元材を引抜いて金属に穴形状を付与
第3章 元材に形状を付与し金属製品に仕上げる
第3章は、元材(板や棒)を加工して金属製品に仕上げる加工について説明しています。具体的には、鍛造、切断、曲げ加工、切削加工、接合などです。カネタが日頃行っている溶接は、接合の一つの方法です。本書では、接合の方法として、リベットなどの締結材を用いた接合、溶接などの冶金的接合、接着剤を用いた接着の3つの方法を説明しています。
NO 項目 内容
22 鍛造 素材を圧縮・打撃して形状付与と特性向上
23 絞り・張出し 円筒、角筒、円錐などの継ぎ目のない中空のくぼみを持つ形状を付与
24 切断・せん断 金属材料を切り離す
25 曲げ 1次加工された素材に曲げ変形を与える
26 切削 相対的な運動を与えて金属材料を工具で削る
27 研削 砥石を使用して不要な個所を削り取る
28 接合 2つ以上の物をくっ付けて一体化
29 非接触加工 金型や工具を接触させずに金属材料を加工
第4章 元材に機能を付与し金属製品に仕上げる
第4章は、元材に機能を付与して金属製品に仕上げる加工についての説明です。具体的には、投射(ショットピーニングやショットブラスト)、熱処理(焼入れ、焼戻し、焼ならしなど)、表面処理(めっき、塗装など)について説明しています。
NO 項目 内容
30 投射 無数の投射材を高速で衝突させ金属表面を塑性加工や除去加工する
31 熱処理 金属材料を加熱・冷却して、金属の特性を向上させる
32 表面処理 金属材料の表面に装飾や機能を付与する
33 化成処理 化学反応で金属材料の表面に素地とは異なる非金属物質の皮膜を生成させる
34 めっき処理 金属材料の表面に素地とは異なる金属皮膜を生成させる
35 陽極酸化処理 金属材料を電解処理して表面に酸化皮膜を生成
36 塗装 金属材料の表面に樹脂を主成分とした塗膜を施す
37 浸炭焼入れ・窒化 金属表面に炭素や窒素を拡散させて硬くする
38 溶射 加熱・溶融させた液体粒子を高速で衝突・積層させて皮膜を形成
第5章 金属加工を実現させる金型
第5章は、鋳造やプレスなどで使用される金型についての説明です。
NO 項目 内容
39 金型 金属加工で使用する金属製の型
40 合金工具鋼 冷間金型や熱間金型に使用される鉄鋼材料
41 超硬合金 高い弾性率と硬度、優れた耐摩耗性を有する複合材料
42 金型表面処理 鋳造加工や塑性加工で使用する金型の寿命を向上させる
第6章 金属加工を実現させる設備
第6章は、金属加工機械についての説明です。
NO 項目 内容
43 金属加工機械 金属材料に形状や機能を付与する金属加工に使用する機械
44 プレス機械 金属材料を成形するプレス加工で使用する金属加工機械
45 工作機械 除去加工で形状を付与する金属加工機械
46 ボール盤 被加工材にドリルを使用して穴あけ加工を行う工作機械
47 旋盤 円柱や円錐などの丸形状に切削加工を行う工作機械
48 フライス盤 角形状に切削加工を行う工作機械
49 研削盤 砥粒を固めた砥石で被加工材の表面を微小に削り取る工作機械
50 放電加工機 アーク放電の熱的エネルギーで被加工材を溶解させて加工する工作機械
51 溶接機 金属材料に熱的エネルギーを与えて接合する機械
第7章 金属加工を下支えする測定・評価技術
第7章は、測定・評価技術についての説明です。
NO 項目 内容
52 測定・評価技術 測定と評価は物づくりの原点
53 温度測定 金属加工時の温度を測定し管理する
54 寸法測定 金属加工時の寸法を測定し管理する
55 表面粗さ測定 外観や機能に影響する微細凹凸の数値化
56 光沢度・色調測定 光沢と色調を数値化する
57 硬さ試験 金属の硬さを調べる試験
58 引張試験 引張荷重負荷時の変形挙動を求める試験
59 疲労試験 金属の疲労特性を調べる試験
60 摩擦・摩耗試験 摩擦運動部分の挙動を把握する試験
61 顕微鏡観察 現物を観察して現象を捉える
第8章 金属加工のこれから
第8章は、3Dプリンタ、IoT、環境対応について書かれています。環境対応の箇所では、切削加工油についての説明があります。切削加工では、潤滑性や冷却の観点から切削加工油が使用されること、また切削加工油を使用することで、工具摩耗の抑制や、被加工物の面粗さと加工効率の向上を図ることができることが説明されています。
なお、最近の環境意識の高まりから、切削加工油の使用量削減に向けたセミドライ加工が注目され始めていることも説明されています。セミドライ加工とは、少量の切削油を塗布して切削加工を行う方法とのことです。
カネタの切粉圧縮機は、切粉を圧縮すると同時に切削加工油を回収して、再利用できるようにする機械です。本書を読んで改めて、今後の切削加工の技術動向を注視していきたいと思いました。
NO 項目 内容
62 積層造形 CADデータを元に金型を使用せずに立体形状を製造する技術
63 金属加工におけるIoT IoTで数値化・収集・一元管理、そして活用
64 環境対応の金属加工技術 環境に配慮した物づくり推進の高まり
以下のコラムも興味深い内容でした。特に「工作機械の受注動向は経済の先行指標」とのこと、非常に勉強になりました。また「圧延加工された身近な金属製品」で紹介されている身近な金属製品とは、何とアルミホイルでした!高度な圧延加工技術を用いて、厚さ0.01mmを実現しているそうです。
コラム
01. かつては銀の価値は金より高かった
02. そもそも元素って何?
03. 地球に鉄が多く存在する理由
04. 金属は人間が鉱石から抽出したもの
05. 金属加工に関連する言葉やことわざ
06. 身近な鋳物 マンホールの蓋
07. 注目が集まる 銅の抗菌・抗ウイルス特性
08. アルミニウムは「電気の缶詰」
09. ふいご
10. ステンレス鋼は、なぜ被削性が劣るの?
11. 工作機械の受注動向は経済の先行指標
12. 伝統工芸技術を活かしたキャラクター銅像
13. 鋳物用合金と展伸用合金
14. 圧延加工された身近な金属製品
15. 実は亜鉛合金
「図解よくわかる金属加工 – 原材料から金属製品ができるまで」を読んだことで、日頃の業務知識の体系化や新たな知識の吸収を図ることができました。さらに詳しい内容については、ぜひ本書を手に取ってみてください。