1. HOME
  2. 事業案内
  3. 製缶
  4. ポリテクセンター在職者訓練コース「ステンレス鋼のTIG溶接技能クリニック」参加報告

製缶

製缶

ポリテクセンター在職者訓練コース「ステンレス鋼のTIG溶接技能クリニック」参加報告

カネタの中堅メンバー3名でポリテクセンターの溶接研修に参加しました。ポリテクセンターとは、求職者の再就職支援のための職業訓練や、中小企業等で働く方々を対象とした職業訓練等を行っている公的な機関です。正式名称は、職業能力開発促進センターです。

参加したコースは、在職者訓練コース「ステンレス鋼のTIG溶接技能クリニック」という2日間コースです。

参加目的は、日頃行っているTIG溶接について体系的に学び直すことで、自分たちの知識の整理やレベルアップを図ることです。自分たちが実務で学んだ知識を整理し、レベルアップすることで、若手に対する指導能力を上げることを狙いとして参加しました。

参加してみて「やはり参加してよかった」と感じました。日頃、何気なく行っている作業の意味や留意点を改めて学ぶことで、より理解も深まり、仕事の質向上につながる効果を実感することができました。

今回、参加した「ステンレス鋼のTIG溶接技能クリニック」について、自分たちの備忘録も兼ねて、内容を抜粋してご紹介します。

ステンレス鋼のTIG溶接技能クリニック」コース概要

受講した「ステンレス鋼のTIG溶接技能クリニック」は在職者向けの2日間コースです。コースの内容は以下の通りです。知識を学ぶ座学と実習の両方を含む内容です。

1.TIG溶接概要
2.機器取扱いとメンテナンス
3.ステンレス鋼の種類と溶接性
4.シールドガスの種類と特徴
5.電極の種類と先端形状
6.各種継手における溶接施工法(溶接実習)

TIG溶接とは?

今回のコースは「TIG溶接」について学ぶコースです。まず「TIG溶接」とは何かというと、「Tungsten Inerm Gas Arc Welding」の略語だそうです。

・Tungsten:タングステン
・Inerm Gas :不活性ガス
・Arc Welding:アーク溶接

つまり、タングステンを電極に使用して、アークを発生させる溶接で、シールドガスには不活性ガス(アルゴンガスなど)を使用する溶接が「TIG溶接」です。

TIG溶接のメリット、デメリットは、下表のとおりです。

【TIG溶接のメリット・デメリット】

項目 内容
TIG溶接の
メリット
・不活性ガスで大気と遮蔽するため、不純物等が溶接金属中に混入しにくく、溶接部の品質がよい。その結果、耐食性などに優れ、表面が酸化されにくく光沢のあるビード外観が得られる。
・数A~数百Aまで安定したアークが形成でき、極薄板から厚板までの溶接が可能。
・溶接後のスラグの除去が不要。
・非溶極式の溶接法であり、溶接入熱と溶着量を独自に制御できる。このため、溶接入熱を広範囲に選択できるため、あらゆる継手形状に適用できる。
・ほとんどの金属に適用可能
TIG溶接の
デメリット
・タングステン電極やアルゴンガスが高価
・溶接速度が遅い。
・風の影響を受けやすい(シールドガスアーク溶接共通の問題)

(出典:ポリテクセンター在職者訓練コース「ステンレス鋼のTIG溶接技能クリニック」テキスト)

なお、タングステンについては、「金属では最も融点が高く、非常に硬い重金属。希少金属(レアメタル)の一つで、中国が世界最大の算出国。世界算出量の83.7%を中国が占める。TIG溶接の電極の他、切削工具の超硬合金として使用される」とのことです。

アーク溶接の種類

TIG溶接はアーク溶接の一種です。アーク溶接には、TIG溶接の他に、MIG溶接などもあります。

「溶接」とは「溶融接合」の略称だそうです。「溶融」して「接合」する。つまり材料を溶かして接合させる加工方法が溶接です。

大分類 中分類 小分類 溶接方法
アーク溶接 被覆アーク溶接
ガスシールドアーク溶接 溶極式 MAG溶接
MIG溶接
エレクトロガスアーク溶接
非溶極式 TIG溶接
プラズマアーク溶接
サブマージアーク溶接など

(出典:ポリテクセンター在職者訓練コース「ステンレス鋼のTIG溶接技能クリニック」テキスト)

カネタでは、TIG溶接の他にMIG溶接も行っています。

ステンレスとは?

今回のコースは「ステンレス鋼のTIG溶接技能」を学ぶコースです。では改めて、ステンレスとは何でしょうか。

「ステンレス(Stainless)とは、ステイン(Stain:けがれ)とレス(Less:ない)の造語。10.5%以上のクロムを含んだ錆びにくい金属のこと。錆びにくい理由は、周りを酸化クロムで覆われているためである。クロムは鉄に含有されると、表面に100万分の3mmという薄い膜を作って錆びを防ぐ。この膜を「不動態被膜」という。」
(出典:ポリテクセンター在職者訓練コース「ステンレス鋼のTIG溶接技能クリニック」テキスト)

ステンレスって「けがれない」という意味だったんですね。ふだんから「ステンレス」という言葉についてはよく使っていますが、改めて勉強になりました。

ステンレス鋼の物理的性質と溶接性

最後に、ステンレス鋼の物理的性質と溶接性が大変勉強になったので、ご紹介します。

ステンレス鋼には、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系などの種類があり、物理的性質、機械的性質が少しずつ異なります。

大分類 分類
Cr系ステンレス鋼 マルテンサイト系ステンレス鋼 SUS410(13Cr)
フェライト系ステンレス鋼 SUS430(18Cr)
Cr-Ni系ステンレス鋼 オーステナイト系ステンレス鋼 SUS304(18Cr+8Ni)
オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼 SuS329J3L(22Cr+5Ni+3Mo+N+低C)
析出硬化系ステンレス鋼 SUS630(17Cr+4Ni+4Cu+Nb)

(出典:ポリテクセンター在職者訓練コース「ステンレス鋼のTIG溶接技能クリニック」テキスト)

ステンレス鋼は、炭素鋼とは性質が異なります。そのため溶接上のさまざまな問題への配慮が必要です。

たとえば、「マルテンサイト系ステンレス鋼は、溶接性が悪く、焼き入れ硬化性があるため、溶接熱影響部が著しく硬化し、溶接割れが起こりやすい」などの留意点があります。

日頃、「割れが入りやすい」など実務知識としては知っていたものの、このように体系的に全体像を教えていただくことで、理解も深まるので、やはり勉強は大事だと感じました。

ポリテクセンターの「ステンレス鋼のTIG溶接技能クリニック」は非常に勉強になる内容でした。ここでご紹介した内容はごく一部です。ぜひ実際に参加して学んでいただきたいです!