カネタの歴史 vol.1-徳之島出身の兄弟によって兵庫県尼崎市で新しい事業が生まれた
1.創業前史
第二次世界大戦(1941 ~ 1945年/昭和16~20年)終盤、奄美群島は沖縄に侵攻した米軍と向き合う本土防衛の最前線となり、全島が長期にわたって激しい空襲を受けた。島民は各所につくった防空壕の中で、なすすべもなく空襲が収まるのを待つしかなかった。
創業者の田袋猛(たぶくろ たけし)は、1943(昭和18)年、徳之島の母間(ぼま)で生まれた。3年後の1946(昭和21)年、弟の勇(いさむ)が誕生。父・吉二は、1939 ~1942 年(昭和14~17年)頃、尼崎市久々知の川崎重工の下請け工場で働いていた。ここには島の人を中心に12名ほどの従業員がいた。偶然だが、この地はのちに猛が創業する場所の近くだった。吉二が島に帰ってきたのは戦時中だが、詳しいことはわからない。
兄弟が幼い頃に父が亡くなり、母・キクが大島紬を織って生計を立てていた。猛は中学校時代バレーボール部に所属、スポーツマンで成績もよかったが、おとなしい性格、勇はやんちゃ坊主だった。
猛は鹿児島実業高校への進学で島を出る。その後、鹿児島で機械設計の職に就く。勇の高校卒業を機に親子3 人で尼崎に移住する。猛は勤めていた会社や自宅で製図の仕事をし、勇は中外炉を扱う仕事をしていた。